** 両虎争う **

 2頭の虎が一人の人間をどちらが食べるか争っていた。そこに管荘子という人が虎を殺そうととしたが、管与と言うものが止めて言うには、 「2頭の虎が戦えば、片方が死に、もう片方も
無事ではすまないでしょう。その虎を殺せば1頭を殺せば、一気に2頭を殺した名声をえられるでしょう。」
 
この話を引用は、戦国時代秦の恵文王が斉の宣王と共に楚の懐王を攻めようとしたとき楚の臣陳軫が、秦の恵文王に出陣を思いとどまらすために説いた時に使われた。これにより楚と斉が相い争っているので、秦は何もせず両国の国力が落ちていくのを見ていた方が得だとおもわせた。

** 曽参人を殺す **

 孔子の高弟の曽参が費という町に住んでいたころ彼と同姓同名のものが人を殺した。そこで、ある人が曽参の母に「曽参が人を殺した」と告げたが、 母親は相手にしなかった。またある人が同じことを告げても、母親は相手にしなかった。しかしまたある人が、「曽参が人を殺した」と告げるとさすがに恐れ驚き逃げ出してしまった。3人が疑えばいかに慈母でも息子を信用することはできなかった。
 
戦国時代秦の将軍甘茂は宜陽に攻め込む際、秦の武王に対しこの話を出して、国内でいかに讒言があっても疑いを持たないよう釘をさした。

** 百里を行くもの九十里をもって半ばとす **

 物事の道程は、最後が非常に困難である。あと少しだと油断する者、驕る者は必ず滅びる。
 
秦の武王が驕っているのを見て或る者が引用した詩。「初めが無い者はないが終わりを全うしたものはすくない」と共に用いて、過去の驕って滅んだ君主を例に挙げて武王に最後まで気をひきしめるように諌めた。

** 蛇足 **

  楚の国のある祭りで酒が振舞われた。皆で飲むにはすくなすぎるので、蛇の絵を一番先に書き上げたものが酒を飲むことにした。一番に書き上げた人が酒を飲もうとしたが、足までかけるぞと足を書き始めた。その間に他の人が蛇を書き上げ杯を奪って「蛇には足がないんだどうしてかけようか、もし書けばそれは蛇ではなくなってしまう」といい酒を飲んだ。先に蛇を書き上げた人はとうとう飲めなかった。
 戦国時代楚の将昭陽は、魏をせめて大勝し魏の将を殺して、八城を手中に収めた。その後兵を転じて斉を攻めようとした。斉にいた説客陳軫が昭陽に会い、この話を出して「今あなたは楚の宰相として魏を攻め、兵を損なうことなく大勝しました。もう十分に名を挙げることができました。しかし、宰相より上の位があるわけではありません。いくら戦に強くても止まることを忘れればいつかはその身は死すかもしれません。そうなれば、蛇足を為すようなものです。」といい、昭陽は、然りといって軍を返した。

** 海大魚 **

 靖郭君田嬰が領地の薛に城を築こうとしたとき、食客の中で諌めるものが多かった。そこで、靖郭君は取り次ぎに取り次ぐなと命令して諌言を聞かなかった。しかし、三言だけ言うだけだ一言でも越えれば煮殺してくれといってといって取り次ぎに頼んだ。 それではと靖郭君は引見し、その男は、「 海大魚」といって立ち去ろうとした。靖郭君は、興味を引かれて続きを話せといい、そこで、その人が言うには「あの魚は、網でも釣り針でも取ることができないが、ひとたび水のない所に打ち上げられると、簡単に捕らえることができます。あなたにとっては、斉の国が海であり、斉から離れてはいけませんもし斉が滅べばいかに城壁を高くした城があろうと意味はないのです。」そういって靖郭君に無用な城の建設を思いとどまらせた。

** 虎の威を借る狐 **

 あるとき虎が狐を捕らえた。狐が言うには「私を食べてはいけない。天帝は私を百獣の王にしたのです。私を食べれば天帝の意志に逆らうことになる。嘘だと思うのならば、歩いてみよう。あなたは私の後ろをついてくればいい。どんな獣でも私の姿をみて逃げ出さないかよく見るがいい」そして虎と一緒に歩いていくと獣たちは一斉に逃げた。
 
楚の宣王が「北方諸国は、楚の宰相昭奚恤を恐れていると聞くが果たしてどうなのかと」家臣に聞くと、江乙が答えて、虎の威を借る狐の話をだして昭奚恤を恐れているのではなく、王を恐れているのだと答えた。