1998年11月16日、政府は23兆9千億円にもなる「緊急経済対策」を決定した。これにより、政府の見解では99年の実質国内総生産(GDP)が2,3%に押し上げられ「はっきりとしたプラス成長」が見込まれるのだという。が、「過去最大」の対策の中身を見ると、景気浮揚のための需要を産まぬ部分が目立ち、個人消費や設備投資などの民間の需要を促す効果も薄い。30兆円ともいわれる需要に対する供給能力の超過分を埋めるには、力不足であろう。

 対策の実質的な財政支出の十兆五千億円が、直接の景気浮揚の効果を生ずるのかは、疑わしい。にもかかわらず、経済企画庁は公共事業などの八兆一千億円だけで成長率を1,9%に押し上げると踏んでいる。また、4兆円の所得税減税と7千億円の地域振興券も、民間消費の活性化を促し10,4%の押し上げを期待できるという。

 これに対して日本経済新聞社の総合経済データバンク「NEEDS」の日本経済モデルの試算では、成長率の押し上げは1,6%程度で99年はマイナス0,1%成長と水面下に留まるであろうと見ている。というのも、社会資本設備費の建設資材などの直接の需要を生まない経費が、3兆円も含まれているためである。

 対策は、個人消費や企業の設備投資といった需要を二次的に誘発することも狙っているが、その効果も疑問視されている。4兆円の特別減税は、98年度の4兆円減税の穴埋めをするのに過ぎないといった声も聞かれている。そのため、その成長率の押し上げは0,5−1%に留まるのではないかと推測されるのである。

 減税を除いた対策の事業規模は17兆9千億円である。これは98年4月の総合経済対策の16兆6千5百億円を上回るというので政府・与党の数字合わせで強引に押し進めたという節が濃厚である。需要の誘発効果などは期待できず、成長率の押し上げ効果は薄いであろうと推測される。

 具体的な面で、99年の今年、民間レベルで如実に現れた「地域振興券」を見てみると、この緊急経済対策の不信頼性がうかがえる。果たしてあの振興券なるもので景気の浮揚効果を上げたと言えるのであろうか、と甚だ疑問を脱し得ない。というのも、このことは巷間の騒ぐように、自民党の票集め、畢竟、公明党への配慮並びに依存によるものではなかろうか。それでなくとも、全市民にではなく年齢別に配布するというのは、差別に繋がるものではなかろうか。果たして全国民にとって喜ばれたものであったろうか。――具体的な方針であったとしても、その効果を疑いたくなるほど、その場限りの対策であったろう。

 また、政府は従来の公共事業型の政策を棄て切れていない。これでは変わるべくものも変わり得ぬ。いい加減、政治家の汚職の手助けをする政策を打ち出さずに願いたい。

 今回の経済対策も、その形骸と、その実質的な作用とを検証するとやはり不発であったといえる。無論、若干の株価上昇に留意するものもいるかもしれぬが、それはアメリカの好景気に啓発されたに過ぎない。政治家はもうそろそろ、後代に無駄な借金を残すのを止めるべきではないのだろうか。


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